韃靼そばについて

中国の雲南省、四川省の山岳地帯発祥のそばです。ポリフェノールの一種「ルチン」が豊富に含まれていることで、近年大きな注目を集めています。

「ダッタン」とはモンゴル系の一部族である「タタール」が語源であると言われています。

ポリフェノールの一種で、毛細血管を強くする効果があるといわれています。
韃靼そばにはルチンが多く含まれているとのことですが普通のそばと比べると、韃靼そばには約８０～１００倍ものルチンが含まれています。

ルチンを分解する酵素が含まれています。分解されたルチンはケセルチンという成分に変わります。ケセルチンもポリフェノールの一種で、ルチンのような健康効果をもたらすものと考えられています。

ルチンが多く含まれていることから、他のそばよりも黄色味を帯び、ほのかな苦みを感じるのが特徴です。

韃靼そばについての栄養成分の分析値については、例数が少なく、また五訂食品成分表にも示されていません。しかし、これまでの報告事例からみますと両者間には大きな差は見られないようですから、ここではソバについて述べておきます。
ソバの栄養価は、米、小麦、トウモロコシなどイネ科の穀類に比して概して高いようです。要点を述べると次のようになります。

（1）ソバ粉のタンパク質含量は、玄米よりも高く、必須アミノ酸の一つあるリジンがとくに多いのが特徴です。リジンには、高血圧や脳卒中発症の予防効果があるとされています。

（2）カリウム、マグネシウム、リンなどミネラル含量がとくに高い。

（3）ビタミンＢ群が豊富に含まれています。ビタミンＣは、他の穀類と同様、含まれていません。

（4）食物繊維含量が高い。食物繊維には血中コレステロールの上昇抑制作用が認められており生活習慣病の予防因子の一つとしても重要です。

韃靼そばの機能性について、実証的な研究をすすめておられる天使大学の荒川義人教授は、韃靼そばに期待される機能性の主なものとして、血圧降下作用、血糖値上昇抑制作用、抗酸化作用の３つをあげておられます。

（1）血圧降下作用：ソバは古くから高血圧予防食として知られており、それはルチンによるものと考えられてきました。また、ソバには、血圧を下げる効果のあるカリウムが多いため、カリウムとの相乗効果も期待できるようです。

（2）血糖値上昇抑制作用：最近、同じ糖質源の食品でも、種類や品種等の違いによって血糖値上昇への影響が異なることがわかってきました。白米と韃靼そば（麺）を比較すると、韃靼そばでは食後の血糖値が低く推移する傾向が認められています。

（3）抗酸化作用：ルチンをはじめポリフェノール類にもっとも期待されているのは、いろいろな疾患（糖尿病、心筋梗塞、癌など）や老化の原因となる活性酸素を除去する作用があることです。韃靼そばのルチンやケルセチンは強い抗酸化作用を持っています。

なお、韃靼そばの機能性については、ここに示したものの他にも、多岐にわたる情報があり、韃靼そばには、アトピー性皮膚炎の症状改善効果や脳神経細胞を保護する何らかの作用もあり、老人性認知症の予防の可能性も示唆されています。今後、これらの研究の一層の進捗を期待したいと思います。

韃靼そばの機能性に深く関与している物質として、ルチンとケルセチンを挙げることができます。
ルチン（Rutin）は、ケルセチンにルチノースが結合した配糖体で、ミカン科の多年草ヘンルウダから最初に得られましたが、マメ科のエンジュの花蕾及びタデ科のソバからも単離され、天然に広く分布しています。穀類の種実では、ソバと韃靼そばにのみ含まれており、韃靼そばの黄色は、Rルチンに由来します。
ルチンは毛細血管の血管壁を強く柔軟にし、脆くなるのを防ぐ作用を示す代表的な化合物であり、脳溢血など出血性諸病の発症率を低くし、循環器系の疾病予防に効果があるとされています。
種実中のルチン含量について、韃靼そばと普通ソバを、同じ条件で栽培し、比較した文献を通覧すると、いずれも韃靼そばの値は、普通ソバと比較して例外なく高く、普通ソバの数十倍ないし百倍程度の値を示しています。
韃靼そばにも普通ソバにも、ルチンを分解する酵素（ルチナーゼ）があり、ルチナーゼが働くと、ルチンが分解され、苦みの原因と考えられるケルセチン（Quercetin）になります。しかし、ケルセチンには、抗酸化作用のほかに糖分の消化吸収を阻害し血糖値の上昇を抑制する作用のあることが認められるので、むしろケルセチンの生成を促すことも重要であり、荒川教授は、今後の商品開発に際しては、ルチンかケルセチンか、スタンスを明確にする必要かがると指摘しておられます。